目次

  1. はじめに - イオン株を売却したのに、なぜ気になるのか
  2. 西友買収による営業収益ランキングの大変動
  3. トライアルGOとは何か
  4. NTT・NECとの座組 - IT×小売の本気度
  5. 省人化(低価格)戦略の強さ
  6. 10年後を見据えた投資判断

はじめに - イオン株を売却したのに、なぜ気になるのか

私は2025年11月にイオン株を全て売却しました。理由は明確で、小売業への投資は極力控えるという方針に基づいています。

小売業は競争が激しく、利益率が低く、業態の変化が激しい業界です。長期投資には向かないと判断しています。

それでも、トライアルGOの動きは気になっています。なぜなら、IT×小売の組み合わせによる省人化(低価格)戦略は、小売業の構造を変える可能性があるからです。

この記事では、西友買収により営業収益ランキングで急上昇したトライアルHDの戦略と、NTT・NECとの座組について分析します。

西友買収による営業収益ランキングの大変動

2025年、トライアルHDは西友を約1兆円で買収し、国内小売業界の勢力図を大きく塗り替えました。

主な小売企業の営業収益ランキング(2025年6月期/24年12月期)

順位 社名 営業収益(億円)
1 セブン&アイ・HD 119,727
2 イオン 101,348
8 マツキヨココカラ&カンパニー 10,616
17 トライアルHD 8,038

注目ポイント:トライアルHDは西友買収により1兆2873億円(トライアルHD 8,038億円 + 西友 4,835億円)の規模となり、理論上は国内小売業界8位に相当する規模に成長しました。

これにより、トライアルHDはマツキヨココカラ&カンパニー(10,616億円)を超え、Top 10圏内に迫る勢いです。

トライアルGOとは何か

トライアルGOは、福岡県を拠点とするトライアルHDが展開するディスカウントストア・スーパーマーケットチェーンです。

トライアルGOの特徴

  • ディスカウント業態:低価格を最優先した商品構成
  • AI・IoT活用:店舗にカメラ・センサーを設置し、顧客動線・在庫管理をAIで最適化
  • 省人化:セルフレジ、自動発注システムにより人件費を削減
  • 商圏拡大:福岡を中心に九州・中国地方、そして全国展開へ

トライアルGOの最大の特徴は、「IT×小売」の徹底した実践にあります。単なるデジタル化ではなく、店舗全体をIoT・AIで制御し、人間の労働を極限まで減らす戦略です。

NTT・NECとの座組 - IT×小売の本気度

トライアルHDは、NTTとNECという日本を代表するIT企業と提携しています。これは単なる技術導入ではなく、小売業のDXを本気で推進する体制です。

NTT・NECとの提携内容

NTTとの提携

  • 店舗内のネットワークインフラ構築
  • AIカメラによる顧客動線分析
  • リアルタイム在庫管理システム
  • 5G通信を活用した店舗運営

NECとの提携

  • 顔認証決済システムの開発
  • AI需要予測による自動発注
  • セキュリティシステムの強化
  • 店舗運営の最適化アルゴリズム

NTTとNECという国策企業との提携は、トライアルHDが単なる小売業ではなく、「日本の小売業のDXモデルケース」として位置づけられていることを示しています。

ちなみに、法務省のGSS移行でもNTT・NECが関与していましたが、今回のトライアルとの座組は民間主導で推進される点が大きく異なります。

省人化(低価格)戦略の強さ

トライアルGOの戦略で最も注目すべきは、IT×小売による省人化です。

小売業の最大のコストは人件費です。特に、レジ打ち、品出し、在庫管理といった作業は、労働集約的で効率が悪いとされてきました。

トライアルGOは、これらをAI・IoT・セルフレジで自動化することで、人件費を大幅に削減し、その分を低価格に還元しています。

私見:これはアパホテルの戦略に似ています。アパホテルは、低価格・駅近立地・省人化により、ビジネスホテル業界で圧倒的なシェアを獲得しました。トライアルGOも同様に、IT×省人化により、低価格と利便性で囲い込みを狙っているのではないかと考えています。

10年後を見据えた投資判断

正直に言うと、私は小売業への投資は極力控えています。理由は以下の通りです。

  • 競争が激しい:参入障壁が低く、差別化が難しい
  • 利益率が低い:価格競争により利益を圧迫される
  • 業態の変化が激しい:EC、コンビニ、ディスカウントなど、次々と新業態が登場

しかし、トライアルGOは例外的に注目しています。なぜなら、以下の理由があるからです。

トライアルGOに期待する理由

  • IT×小売の本気度:NTT・NECとの提携により、単なるデジタル化ではなく、店舗全体をシステム化している
  • 省人化による低価格:人件費削減を価格に還元することで、価格競争力を持続的に維持できる
  • 商圏拡大の可能性:西友買収により全国展開が加速し、利便性と商圏拡大で囲い込みが可能
  • アパホテル型の成功モデル:低価格・利便性・省人化の組み合わせは、長期的に強い

ただし、これが実現するには10年近くかかると思います。小売業のDXは一朝一夕にはいきません。店舗数の拡大、システムの安定化、顧客の定着には時間がかかります。

だからこそ、今すぐ投資するのではなく、動向を注視しているというのが私の立場です。

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