なぜこのテーマを考えるのか

中小企業診断士の資格取得を目指している今、「資格を取った後、どうやって価値を提供するか」を考えておくことは重要だ。

資格取得はゴールではなく、スタート地点。経営コンサルタントとして活動する際の価格設定・顧客戦略・プラットフォーム選定を事前に整理しておくことで、合格後の動きがスムーズになる。

この記事では、「いくらで・どこで・誰に売るか」という3つの軸で戦略を検討する。

顧客層の分類と特徴

中小企業診断士・経営コンサルタントが対象とする顧客層は、大きく4つのセグメントに分けられる。

1. 小規模事業者・個人事業主

  • 特徴:従業員5名以下、年商1,000万円~5,000万円
  • ニーズ:補助金申請、経営改善、販路開拓、資金繰り
  • 予算感:単発5万円~20万円、月額顧問3万円~10万円
  • メリット:案件獲得の難易度が低い、スピーディな意思決定
  • デメリット:単価が低い、継続率が不安定

2. 中小企業(従業員20~100名)

  • 特徴:従業員20~100名、年商1億円~10億円
  • ニーズ:事業戦略策定、組織改革、DX推進、事業承継
  • 予算感:プロジェクト型50万円~300万円、月額顧問20万円~50万円
  • メリット:単価が高い、中長期的な関係構築が可能
  • デメリット:案件獲得の難易度が高い、実績が求められる

3. スタートアップ・ベンチャー企業

  • 特徴:成長期の企業、資金調達後の事業拡大フェーズ
  • ニーズ:事業計画策定、資金調達支援、IPO準備、PMF達成支援
  • 予算感:プロジェクト型30万円~200万円、ストックオプション報酬も
  • メリット:成長性が高い、スピード感がある、やりがいが大きい
  • デメリット:報酬が株式や将来価値になる場合も、専門知識が必要

4. 大企業・中堅企業の新規事業部門

  • 特徴:既存企業の新規事業立ち上げ、イノベーション推進部門
  • ニーズ:新規事業戦略、市場調査、ビジネスモデル設計
  • 予算感:プロジェクト型100万円~500万円、月額顧問30万円~100万円
  • メリット:単価が最も高い、安定した支払い能力
  • デメリット:意思決定が遅い、参入障壁が高い、人脈・実績必須

価格設定の考え方

コンサルティングの価格設定は、「提供価値」「顧客の支払い能力」「自分のポジショニング」の3要素で決まる。

単価設定の目安

📋 単発コンサルティング

  • 初期相談(1時間):5,000円~20,000円
  • 補助金申請支援:10万円~30万円(成功報酬型も)
  • 事業計画書作成:20万円~50万円
  • 経営診断レポート:30万円~100万円

📅 月額顧問契約

  • ライトプラン:3万円~10万円/月(月1~2回面談、メール相談無制限)
  • スタンダードプラン:10万円~30万円/月(週1回面談、経営会議参加)
  • プレミアムプラン:30万円~100万円/月(常時サポート、取締役クラス参画)

🎯 プロジェクト型

  • 短期(1~3ヶ月):50万円~200万円
  • 中期(3~6ヶ月):200万円~500万円
  • 長期(6ヶ月~1年):500万円~1,000万円以上

価格設定のポイント

  1. 時間単価ベースで考えない

    コンサルティングは「時間」ではなく「成果」で価格を決める。時間単価思考は自分の価値を制限する。

  2. 「安さ」で勝負しない

    価格競争に巻き込まれると疲弊する。専門性・実績・独自性で差別化する。

  3. 段階的に単価を上げる

    最初は実績作りで低単価もあり。但し、計画的に単価を上げていく戦略が必要。

  4. 成功報酬型も選択肢

    補助金申請・資金調達支援など、成果が明確な案件は成功報酬型も効果的。

プラットフォーム戦略

顧客との接点をどこで作るか。それぞれのプラットフォームには特徴がある。

1. クラウドソーシング系

ココナラ

  • 顧客層:個人事業主、小規模事業者
  • 単価相場:5,000円~50,000円
  • メリット:初心者でも始めやすい、集客不要、決済が安心
  • デメリット:手数料22%、単価が低い、価格競争が激しい
  • 戦略:実績作り・評価蓄積の初期フェーズに活用

ランサーズ・クラウドワークス

  • 顧客層:小規模事業者、中小企業
  • 単価相場:10,000円~200,000円
  • メリット:案件数が多い、継続発注の可能性
  • デメリット:手数料20%、提案競争が激しい
  • 戦略:プロフィールと実績を充実させ、継続案件を狙う

2. スポットコンサル系

ビザスク

  • 顧客層:大企業、コンサルティングファーム
  • 単価相場:15,000円~30,000円/時間
  • メリット:単価が高い、専門知識が評価される、大企業案件
  • デメリット:単発が多い、専門性が必要、案件マッチングまで時間
  • 戦略:特定業界・領域の専門家としてポジショニング

サンカク

  • 顧客層:スタートアップ、ベンチャー企業
  • 単価相場:プロジェクト単位で数十万~数百万
  • メリット:成長企業との関係構築、やりがいが大きい
  • デメリット:案件獲得の競争が激しい、即戦力が求められる
  • 戦略:スタートアップ支援実績を作り、ポートフォリオ化

3. 顧問契約プラットフォーム

i-common(アイコモン)

  • 顧客層:中小企業、中堅企業
  • 単価相場:月額10万円~50万円
  • メリット:継続収入、深い関係構築
  • デメリット:審査がある、実績が必要
  • 戦略:ある程度の実績を積んでから登録、長期的な収益源に

顧問名鑑

  • 顧客層:中小企業、大企業新規事業部門
  • 単価相場:月額20万円~100万円
  • メリット:高単価、企業の経営層との直接契約
  • デメリット:ハイクラス人材向け、豊富な実績が必須
  • 戦略:キャリア後半での活用、経営層としての実績をアピール

4. 公的機関・支援機関

よろず支援拠点・商工会議所

  • 顧客層:小規模事業者、地域企業
  • 単価相場:日当3万円~5万円(登録専門家として)
  • メリット:安定した案件供給、信頼性が高い
  • デメリット:単価が低い、公的制約がある
  • 戦略:実績作り、地域での知名度向上に活用

5. 自社メディア(ブログ・SNS・YouTube)

  • 顧客層:あらゆる層(発信内容次第)
  • 単価相場:自由設定可能
  • メリット:手数料ゼロ、ブランディング、資産化
  • デメリット:集客まで時間がかかる、継続的な発信が必要
  • 戦略:長期的な基盤として育成、SEO対策とSNS活用

戦略的ロードマップ

資格取得後の段階的な収益化戦略を考える。

フェーズ1:実績構築期(0~6ヶ月)

  • 目標:案件実績10件以上、顧客評価の蓄積
  • プラットフォーム:ココナラ、ランサーズ、公的支援機関
  • 単価:5万円~20万円(実績作りを優先)
  • アクション:低単価でも確実にこなし、高評価を集める

フェーズ2:単価向上期(6ヶ月~1年)

  • 目標:月額顧問契約2~3社、平均単価20万円~
  • プラットフォーム:ビザスク、サンカク、i-common
  • 単価:20万円~50万円
  • アクション:得意領域を明確化、専門家ポジション確立

フェーズ3:ブランド確立期(1年~3年)

  • 目標:自社メディア経由の問い合わせ月3件以上
  • プラットフォーム:自社サイト、YouTube、顧問名鑑
  • 単価:50万円~200万円
  • アクション:書籍出版、セミナー登壇、メディア露出

フェーズ4:プラットフォーム卒業期(3年以降)

  • 目標:プラットフォーム依存度ゼロ、紹介のみで回る状態
  • プラットフォーム:自社メディア、既存顧客紹介
  • 単価:自由設定(100万円~)
  • アクション:ハイクラス顧客との長期契約、パートナーシップ形成

個人的な戦略案

自分自身のバックグラウンド(IT業界サラリーマン)を活かした戦略を考える。

ターゲット顧客

  • 第一優先:IT・DX推進に悩む中小企業(年商1億~10億円)
  • 第二優先:SaaSスタートアップ(PMF達成前後)
  • 第三優先:大企業の新規事業部門(DX・イノベーション推進)

価格設定

  • 初期相談(1時間):10,000円
  • DX推進支援(3ヶ月):150万円~
  • 月額顧問契約:20万円~50万円
  • SaaS事業戦略策定:100万円~

プラットフォーム戦略

  1. 短期(実績作り):ココナラ、ランサーズで10件実績を作る
  2. 中期(単価UP):ビザスク、サンカクでIT領域の専門家ポジション
  3. 長期(自社メディア):このブログをSEO強化、問い合わせ導線構築

差別化ポイント

  • 「IT×経営」の掛け算で独自性を出す
  • 実務経験に基づく「現場で使える提案」
  • ブログ・SNSでの情報発信による認知度向上
  • 中小企業診断士×IT実務経験というダブルブランド

まとめ

中小企業診断士・経営コンサルタントとして独立する際の「いくらで・どこで・誰に売るか」を整理した。

顧客層の選択

  • 小規模事業者:単価低いが案件獲得しやすい(実績作りに最適)
  • 中小企業:単価高く、長期関係構築が可能(メインターゲット)
  • スタートアップ:成長性高く、やりがいあり(専門性活かせる)
  • 大企業:最高単価だが参入障壁高い(長期目標)

価格設定の原則

  • 時間単価ではなく「成果」で価格を決める
  • 安売りせず、専門性で差別化する
  • 段階的に単価を上げていく戦略を持つ

プラットフォーム戦略

  • 初期:ココナラ・ランサーズで実績作り
  • 中期:ビザスク・サンカクで単価UP
  • 長期:自社メディアで集客、プラットフォーム卒業

資格取得はゴールではなく、スタート地点。「どうやって価値を届けるか」を考えながら学習を進めることで、合格後の動き出しが格段に速くなる。

まずは2026年合格を目指し、その先の戦略も見据えながら一歩ずつ進んでいく。