目次

  1. はじめに - なぜマーケティング用語を実務で理解すべきか
  2. RFM分析とは何か
  3. RFM分析の実践ケース - カフェチェーンの会員セグメント
  4. LTV(顧客生涯価値)とは何か
  5. LTVの計算方法と活用例 - ECサイトのケース
  6. CRM(顧客関係管理)
  7. CAC・ROAS・ROI - 投資効率を測る指標
  8. KPI・KGI - 目標設定と達成度の測定
  9. その他の重要な頭文字マーケティング用語
  10. 中小企業診断士試験対策のポイント
  11. まとめ - 実務と試験対策の両立

はじめに - なぜマーケティング用語を実務で理解すべきか

中小企業診断士試験には、RFM分析、LTV、CAC、ROAS、ROI、KPI、CVR、CTRといった、アルファベット頭文字のマーケティング用語が頻出します。

これらの用語を単なる「暗記項目」として扱うのではなく、「実務でどう使われるか」を理解することが、試験対策としても、そして実際のビジネスシーンでも重要です。

この記事では、RFM分析とLTVを中心に、実際のビジネス事例(カフェチェーン、ECサイトなど)を交えて解説します。「語彙だけでなく、使い方まで理解したい」という方に最適な内容です。

RFM分析とは何か

RFM分析は、顧客を3つの軸で評価・セグメント化する手法です。

Recency(最終購入日) - 最近いつ買ったか

Frequency(購入頻度) - どのくらいの頻度で買っているか

Monetary(購入金額) - いくら使っているか

この3つの指標をもとに、顧客を「優良顧客」「休眠顧客」「新規顧客」などにセグメント化します。

例えば、「最近購入した(R高)・頻繁に買う(F高)・高額購入(M高)」の顧客は、最優良顧客として特別なVIP待遇やロイヤルティプログラムの対象とします。

一方、「最近買っていない(R低)・過去には頻繁に買っていた(F高)」の顧客は、休眠顧客として、リエンゲージメント施策(クーポン送付、キャンペーン案内など)の対象とします。

RFM分析の実践ケース - カフェチェーンの会員セグメント

実際の事例として、全国展開するカフェチェーンの会員10,000人をRFM分析でセグメント化したケースを見てみましょう。

セグメント R(最終購入) F(頻度) M(金額) 人数 施策
最優良顧客 7日以内 週3回以上 月15,000円以上 800人 VIPプログラム、限定イベント招待
優良顧客 14日以内 週1〜2回 月5,000円以上 2,500人 ポイント2倍キャンペーン
休眠顧客 90日以上前 過去は週1回 月3,000円 1,800人 復帰クーポン(500円OFF)
新規顧客 初回購入 1回 500円 3,500人 2回目購入で300円OFF

このように、RFM分析により顧客を可視化し、それぞれに適した施策を打つことで、マーケティングROI(投資対効果)を最大化できます。

実際、このカフェチェーンでは休眠顧客向けクーポン施策により、1,800人中320人(約18%)が再来店し、マーケティングコスト90万円に対して売上増220万円を達成しました(ROAS 244%)。

LTV(顧客生涯価値)とは何か

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、1人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額を指します。

LTV = 平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間

例えば、サブスクリプション型のビジネス(Netflix、Spotify、SaaSなど)では、LTVが非常に重要です。

月額1,000円のサービスに3年間契約する顧客のLTVは、1,000円 × 12ヶ月 × 3年 = 36,000円です。

このLTVが、新規顧客獲得コスト(CAC: Customer Acquisition Cost)を上回らなければ、ビジネスとして成立しません。

健全なビジネスモデルの目安は、LTV / CAC ≧ 3とされています。つまり、顧客獲得に1万円かけたら、その顧客から3万円以上の利益を得ることが理想です。

LTVの計算方法と活用例 - ECサイトのケース

アパレルECサイトを例に、LTVの計算と施策の実践例を見てみましょう。

【前提条件】

  • 平均購入単価:5,000円
  • 購入頻度:年4回(3ヶ月に1回)
  • 平均継続期間:3年

【LTV計算】

LTV = 5,000円 × 4回/年 × 3年 = 60,000円

【CAC(顧客獲得コスト)】

  • Web広告費:月100万円
  • 新規顧客獲得数:月80人
  • CAC = 100万円 ÷ 80人 = 12,500円

【LTV / CAC比率】

60,000円 ÷ 12,500円 = 4.8

→ 健全な水準(3以上が理想)

この数値から、新規顧客1人あたり12,500円の広告費をかけても、3年間で60,000円の売上が見込めるため、投資対効果が高いことが分かります。

さらに、このECサイトではLTVを向上させる施策として以下を実施しました:

  • 購入頻度UP施策:メルマガで季節限定商品を告知 → 年4回 → 年5回に増加
  • 平均単価UP施策:関連商品レコメンド → 5,000円 → 5,800円に増加
  • 継続期間UP施策:ポイントプログラムで離脱防止 → 3年 → 3.5年に延長

この結果、改善後のLTV = 5,800円 × 5回 × 3.5年 = 101,500円となり、LTVが約69%向上しました。

CRM(顧客関係管理)

CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)とは、顧客情報を一元管理し、関係性を強化して売上拡大につなげる仕組みです。

CRMシステムには、顧客の購入履歴、問い合わせ内容、行動データなどが蓄積され、それをもとにパーソナライズされたマーケティングが可能になります。

代表的なCRMツールには、Salesforce、HubSpot、Zoho CRMなどがあります。

RFM分析やLTV計算も、CRMシステムと連携することで自動化・効率化できます。

CAC・ROAS・ROI - 投資効率を測る指標

CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)

CAC = マーケティング費用 ÷ 新規顧客獲得数

新規顧客を1人獲得するためにかかったコスト。LTVとセットで評価する。

ROAS(Return On Advertising Spend:広告費回収率)

ROAS = 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100

例:広告費50万円で売上200万円 → ROAS = 400%

一般的にROAS 200%以上が合格ライン。

ROI(Return On Investment:投資利益率)

ROI = (売上 - 投資額) ÷ 投資額 × 100

例:投資100万円で売上150万円、利益50万円 → ROI = 50%

ROIはマーケティングだけでなく、設備投資や事業全体の評価にも使われる。

KPI・KGI - 目標設定と達成度の測定

KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)

最終的に達成したい目標。例:「今期の売上10億円達成」「新規顧客1,000人獲得」

KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)

KGI達成のための中間指標。例:「月間サイト訪問者10万人」「メルマガ開封率20%」

KGIとKPIの関係性を理解することが重要です。KGIは「ゴール」、KPIは「ゴールに至るプロセス」です。

例:KGI = 売上1億円達成 の場合、以下のようなKPIを設定します。

  • サイト訪問者数:月10万人
  • CVR(コンバージョン率):2%
  • 平均購入単価:5,000円

これにより、10万人 × 2% × 5,000円 × 12ヶ月 = 1.2億円 の売上が見込めます。

その他の重要な頭文字マーケティング用語

用語 正式名称 意味
CVR Conversion Rate コンバージョン率。サイト訪問者のうち購入・登録した割合。
CTR Click Through Rate クリック率。広告表示回数に対するクリック数の割合。
NPS Net Promoter Score 顧客推奨度。「他人に勧めたいか」を測る指標。
チャーンレート Churn Rate 解約率。サブスクサービスで重視される指標。
MQL / SQL Marketing / Sales Qualified Lead マーケティング/営業が認めた見込み客。BtoB営業で重要。
AOV Average Order Value 平均注文金額。1回の購入でいくら買うかの指標。
リテンション率 Retention Rate 顧客維持率。一定期間後も継続している顧客の割合。
ABテスト A/B Testing 2つの施策を比較して効果を検証する手法。

中小企業診断士試験対策のポイント

中小企業診断士試験(特に企業経営理論)では、これらのマーケティング用語が頻出します。

【試験対策の3つのポイント】

  1. 英語のスペルと日本語訳をセットで暗記
    例:CAC = Customer Acquisition Cost = 顧客獲得コスト
  2. 計算式を正確に覚える
    特にLTV、ROAS、ROI、CVRの計算式は頻出
  3. 実務事例とセットで理解
    「RFM分析はどのようなケースで有効か?」といった応用問題に対応できる

過去問では、「以下のうち、LTVを向上させる施策として適切でないものはどれか」といった形式で出題されます。

単なる暗記ではなく、「この施策はLTVのどの要素(購入頻度・単価・継続期間)に効くのか」を論理的に考える力が求められます。

まとめ - 実務と試験対策の両立

この記事では、RFM分析、LTV、CAC、ROAS、ROI、KPI/KGI、CVR、CTRなどの頭文字マーケティング用語を、実務事例(カフェチェーン、ECサイト)を交えて解説しました。

これらの用語は、中小企業診断士試験だけでなく、実際のビジネスシーンでも頻繁に使われるため、「暗記」ではなく「理解」することが重要です。

特に、RFM分析で顧客をセグメント化し、LTVを最大化する施策を実行するという一連の流れは、マーケティングの実務で非常に重要です。

試験対策としても、実務での活用を想定した学習をすることで、記憶の定着率が格段に向上します。

ぜひ、この記事の内容を参考に、「語彙だけでなく、使い方まで理解する」学習を進めてください。