目次
はじめに - なぜマーケティング用語を実務で理解すべきか
中小企業診断士試験には、RFM分析、LTV、CAC、ROAS、ROI、KPI、CVR、CTRといった、アルファベット頭文字のマーケティング用語が頻出します。
これらの用語を単なる「暗記項目」として扱うのではなく、「実務でどう使われるか」を理解することが、試験対策としても、そして実際のビジネスシーンでも重要です。
この記事では、RFM分析とLTVを中心に、実際のビジネス事例(カフェチェーン、ECサイトなど)を交えて解説します。「語彙だけでなく、使い方まで理解したい」という方に最適な内容です。
RFM分析とは何か
RFM分析は、顧客を3つの軸で評価・セグメント化する手法です。
Recency(最終購入日) - 最近いつ買ったか
Frequency(購入頻度) - どのくらいの頻度で買っているか
Monetary(購入金額) - いくら使っているか
この3つの指標をもとに、顧客を「優良顧客」「休眠顧客」「新規顧客」などにセグメント化します。
例えば、「最近購入した(R高)・頻繁に買う(F高)・高額購入(M高)」の顧客は、最優良顧客として特別なVIP待遇やロイヤルティプログラムの対象とします。
一方、「最近買っていない(R低)・過去には頻繁に買っていた(F高)」の顧客は、休眠顧客として、リエンゲージメント施策(クーポン送付、キャンペーン案内など)の対象とします。
RFM分析の実践ケース - カフェチェーンの会員セグメント
実際の事例として、全国展開するカフェチェーンの会員10,000人をRFM分析でセグメント化したケースを見てみましょう。
| セグメント | R(最終購入) | F(頻度) | M(金額) | 人数 | 施策 |
|---|---|---|---|---|---|
| 最優良顧客 | 7日以内 | 週3回以上 | 月15,000円以上 | 800人 | VIPプログラム、限定イベント招待 |
| 優良顧客 | 14日以内 | 週1〜2回 | 月5,000円以上 | 2,500人 | ポイント2倍キャンペーン |
| 休眠顧客 | 90日以上前 | 過去は週1回 | 月3,000円 | 1,800人 | 復帰クーポン(500円OFF) |
| 新規顧客 | 初回購入 | 1回 | 500円 | 3,500人 | 2回目購入で300円OFF |
このように、RFM分析により顧客を可視化し、それぞれに適した施策を打つことで、マーケティングROI(投資対効果)を最大化できます。
実際、このカフェチェーンでは休眠顧客向けクーポン施策により、1,800人中320人(約18%)が再来店し、マーケティングコスト90万円に対して売上増220万円を達成しました(ROAS 244%)。
LTV(顧客生涯価値)とは何か
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、1人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額を指します。
LTV = 平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間
例えば、サブスクリプション型のビジネス(Netflix、Spotify、SaaSなど)では、LTVが非常に重要です。
月額1,000円のサービスに3年間契約する顧客のLTVは、1,000円 × 12ヶ月 × 3年 = 36,000円です。
このLTVが、新規顧客獲得コスト(CAC: Customer Acquisition Cost)を上回らなければ、ビジネスとして成立しません。
健全なビジネスモデルの目安は、LTV / CAC ≧ 3とされています。つまり、顧客獲得に1万円かけたら、その顧客から3万円以上の利益を得ることが理想です。
LTVの計算方法と活用例 - ECサイトのケース
アパレルECサイトを例に、LTVの計算と施策の実践例を見てみましょう。
【前提条件】
- 平均購入単価:5,000円
- 購入頻度:年4回(3ヶ月に1回)
- 平均継続期間:3年
【LTV計算】
LTV = 5,000円 × 4回/年 × 3年 = 60,000円
【CAC(顧客獲得コスト)】
- Web広告費:月100万円
- 新規顧客獲得数:月80人
- CAC = 100万円 ÷ 80人 = 12,500円
【LTV / CAC比率】
60,000円 ÷ 12,500円 = 4.8
→ 健全な水準(3以上が理想)
この数値から、新規顧客1人あたり12,500円の広告費をかけても、3年間で60,000円の売上が見込めるため、投資対効果が高いことが分かります。
さらに、このECサイトではLTVを向上させる施策として以下を実施しました:
- 購入頻度UP施策:メルマガで季節限定商品を告知 → 年4回 → 年5回に増加
- 平均単価UP施策:関連商品レコメンド → 5,000円 → 5,800円に増加
- 継続期間UP施策:ポイントプログラムで離脱防止 → 3年 → 3.5年に延長
この結果、改善後のLTV = 5,800円 × 5回 × 3.5年 = 101,500円となり、LTVが約69%向上しました。
CRM(顧客関係管理)
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)とは、顧客情報を一元管理し、関係性を強化して売上拡大につなげる仕組みです。
CRMシステムには、顧客の購入履歴、問い合わせ内容、行動データなどが蓄積され、それをもとにパーソナライズされたマーケティングが可能になります。
代表的なCRMツールには、Salesforce、HubSpot、Zoho CRMなどがあります。
RFM分析やLTV計算も、CRMシステムと連携することで自動化・効率化できます。
CAC・ROAS・ROI - 投資効率を測る指標
CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)
CAC = マーケティング費用 ÷ 新規顧客獲得数
新規顧客を1人獲得するためにかかったコスト。LTVとセットで評価する。
ROAS(Return On Advertising Spend:広告費回収率)
ROAS = 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100
例:広告費50万円で売上200万円 → ROAS = 400%
一般的にROAS 200%以上が合格ライン。
ROI(Return On Investment:投資利益率)
ROI = (売上 - 投資額) ÷ 投資額 × 100
例:投資100万円で売上150万円、利益50万円 → ROI = 50%
ROIはマーケティングだけでなく、設備投資や事業全体の評価にも使われる。
KPI・KGI - 目標設定と達成度の測定
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)
最終的に達成したい目標。例:「今期の売上10億円達成」「新規顧客1,000人獲得」
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)
KGI達成のための中間指標。例:「月間サイト訪問者10万人」「メルマガ開封率20%」
KGIとKPIの関係性を理解することが重要です。KGIは「ゴール」、KPIは「ゴールに至るプロセス」です。
例:KGI = 売上1億円達成 の場合、以下のようなKPIを設定します。
- サイト訪問者数:月10万人
- CVR(コンバージョン率):2%
- 平均購入単価:5,000円
これにより、10万人 × 2% × 5,000円 × 12ヶ月 = 1.2億円 の売上が見込めます。
その他の重要な頭文字マーケティング用語
| 用語 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| CVR | Conversion Rate | コンバージョン率。サイト訪問者のうち購入・登録した割合。 |
| CTR | Click Through Rate | クリック率。広告表示回数に対するクリック数の割合。 |
| NPS | Net Promoter Score | 顧客推奨度。「他人に勧めたいか」を測る指標。 |
| チャーンレート | Churn Rate | 解約率。サブスクサービスで重視される指標。 |
| MQL / SQL | Marketing / Sales Qualified Lead | マーケティング/営業が認めた見込み客。BtoB営業で重要。 |
| AOV | Average Order Value | 平均注文金額。1回の購入でいくら買うかの指標。 |
| リテンション率 | Retention Rate | 顧客維持率。一定期間後も継続している顧客の割合。 |
| ABテスト | A/B Testing | 2つの施策を比較して効果を検証する手法。 |
中小企業診断士試験対策のポイント
中小企業診断士試験(特に企業経営理論)では、これらのマーケティング用語が頻出します。
【試験対策の3つのポイント】
- 英語のスペルと日本語訳をセットで暗記
例:CAC = Customer Acquisition Cost = 顧客獲得コスト - 計算式を正確に覚える
特にLTV、ROAS、ROI、CVRの計算式は頻出 - 実務事例とセットで理解
「RFM分析はどのようなケースで有効か?」といった応用問題に対応できる
過去問では、「以下のうち、LTVを向上させる施策として適切でないものはどれか」といった形式で出題されます。
単なる暗記ではなく、「この施策はLTVのどの要素(購入頻度・単価・継続期間)に効くのか」を論理的に考える力が求められます。
まとめ - 実務と試験対策の両立
この記事では、RFM分析、LTV、CAC、ROAS、ROI、KPI/KGI、CVR、CTRなどの頭文字マーケティング用語を、実務事例(カフェチェーン、ECサイト)を交えて解説しました。
これらの用語は、中小企業診断士試験だけでなく、実際のビジネスシーンでも頻繁に使われるため、「暗記」ではなく「理解」することが重要です。
特に、RFM分析で顧客をセグメント化し、LTVを最大化する施策を実行するという一連の流れは、マーケティングの実務で非常に重要です。
試験対策としても、実務での活用を想定した学習をすることで、記憶の定着率が格段に向上します。
ぜひ、この記事の内容を参考に、「語彙だけでなく、使い方まで理解する」学習を進めてください。