税金と供給曲線:試験で必ず出る重要テーマ
中小企業診断士の経済学・経済政策では、「税金が供給曲線にどう影響するか」が頻出テーマ。
税金の種類によって、供給曲線の動き方が全く違う。ここを理解すれば、試験で確実に得点できる。
💡 この記事では、定額税、従量税、従価税の3つを軸に、補助金や環境税も含めて完全整理する。
① 定額税(人頭税)
📋 定額税とは
定額税は、生産量に関係なく一定額を課税する税金。
- 例:営業許可料、事業所ごとの固定税、年間一律の事業税
📊 供給曲線への影響
短期:影響しない(動かない)
長期:参入退出に影響 → 供給量が減る可能性
🔍 理由
- 生産量に関係なく一定額 → 1個作っても100個作っても税額は同じ
- 限界費用(MC)が変わらない → 追加1個を作るコストに影響しない
- → 供給曲線は動かない
⚠️ ただし、赤字企業が退出すると、長期的には供給曲線が左にシフト。定額税で固定費が増えた結果、採算が取れなくなる企業が市場から撤退するため。
🎯 試験頻出ポイント
「定額税を課すと供給曲線はどうなるか?」
答え:短期的には動かない。長期的には左シフトの可能性。
② 従量税(数量税)
📋 従量税とは
従量税は、生産量や販売量1単位あたりに課税する税金。
- 例:ガソリン税(1リットルあたり◯円)、酒税(1本あたり◯円)、たばこ税
📊 供給曲線への影響
供給曲線が上方(左)に平行シフト
🔍 理由
- 1単位あたりのコストが上がる → 1個作るごとに税金がかかる
- 限界費用が一定額増加 → MC曲線が上に平行移動
- → 供給曲線(=MC曲線)が上にシフト
📈 グラフのイメージ
元の供給曲線をそのまま上に平行移動。
従量税の額だけ、縦軸方向に上に動く。
✅ 従量税は平行シフト。これが重要。
🎯 試験頻出ポイント
「1個あたり10円の従量税を課すと供給曲線はどうなるか?」
答え:供給曲線が上方に10円平行シフト。
③ 従価税(価格税)
📋 従価税とは
従価税は、価格に対して一定割合で課税する税金。
- 例:消費税(価格の10%)、関税(価格の◯%)
📊 供給曲線への影響
供給曲線が上方に回転(傾きが変わる)
🔍 理由
- 価格が高いほど税額が増える → 100円の商品なら10円、1000円なら100円
- 限界費用の増加が価格依存 → 高い商品ほど税負担が大きい
- → 供給曲線が原点を起点により急になる
📈 グラフのイメージ
原点を起点に、供給曲線が時計回りに回転する。
価格が高い部分ほど、上方への移動幅が大きい。
⚠️ 従価税は回転シフト。従量税の平行シフトとは違う。
🎯 試験頻出ポイント
「価格の10%の従価税を課すと供給曲線はどうなるか?」
答え:供給曲線が上方に回転し、傾きが急になる。
3つの税の比較表
| 税の種類 | 課税方法 | 例 | 供給曲線の動き |
|---|---|---|---|
| 定額税 | 一定額 | 営業許可料 | 短期:動かない 長期:左シフト可能性 |
| 従量税 | 1単位あたり | ガソリン税、酒税 | 上方に平行シフト |
| 従価税 | 価格の◯% | 消費税、関税 | 上方に回転 |
④ 補助金(負の税)
📋 補助金とは
補助金は、税金の逆。政府が企業に対してお金を支給する。
④-1 従量補助金
- 例:1台売るごとに◯円補助、1kWh発電するごとに◯円補助
- 供給曲線の動き:下方(右)に平行シフト
- 理由:従量税の逆。1単位あたりのコストが下がる
④-2 定率補助金
- 例:価格の◯%補助、売上の◯%補助
- 供給曲線の動き:下方に回転
- 理由:従価税の逆。価格が高いほど補助額が大きい
✅ 補助金は税金の逆。下方(右)にシフトまたは回転と覚える。
⑤ 環境税・炭素税
📋 環境税・炭素税とは
環境税・炭素税は、環境負荷に対して課税する税金。
- 例:CO₂排出量1トンあたり◯円、排水量1㎥あたり◯円
📊 供給曲線への影響
本質は従量税。
- 排出量1単位あたりに課税
- → 供給曲線は上方に平行シフト
💡 環境税は「環境」という名前に惑わされず、従量税として扱う。
🎯 試験頻出ポイント
「CO₂排出量1トンあたり1,000円の炭素税を課すと供給曲線はどうなるか?」
答え:供給曲線が上方に平行シフト(従量税と同じ)。
まとめ:税金と供給曲線の関係を一覧で整理
| 種類 | 課税/補助の方法 | 供給曲線の動き | 限界費用への影響 |
|---|---|---|---|
| 定額税 | 一定額 | 短期:動かない 長期:左シフト可能性 |
変わらない |
| 従量税 | 1単位あたり | 上方に平行シフト | 一定額増加 |
| 従価税 | 価格の◯% | 上方に回転 | 価格依存で増加 |
| 従量補助金 | 1単位あたり | 下方に平行シフト | 一定額減少 |
| 定率補助金 | 価格の◯% | 下方に回転 | 価格依存で減少 |
| 環境税・炭素税 | 排出量1単位あたり | 上方に平行シフト | 一定額増加 |
📚 覚え方のコツ
- 定額税 → 短期では動かない(MCが変わらないから)
- 従量税・環境税 → 平行シフト(1単位あたり一定額)
- 従価税 → 回転(価格が高いほど税額が増える)
- 補助金 → 税金の逆(下方にシフト/回転)
💡 試験では図を描いて考える。「上にシフト」「回転」「動かない」を図で確認すれば間違えにくい。
試験対策:よくある引っかけ問題
🚨 引っかけ1:定額税で供給曲線が動く?
✗ 誤り:定額税を課すと供給曲線が左にシフトする。
✓ 正解:短期的には動かない。長期的には参入退出により左シフトの可能性はあるが、それは別の話。
🚨 引っかけ2:従量税と従価税を混同
✗ 誤り:従量税を課すと供給曲線が回転する。
✓ 正解:従量税は平行シフト。回転するのは従価税。
🚨 引っかけ3:環境税の扱い
✗ 誤り:環境税は特殊な税なので供給曲線の動きも特殊。
✓ 正解:環境税は従量税と同じ。排出量1単位あたり課税なので、平行シフト。
⚠️ 試験では「名前」に惑わされず、「何に対して課税するか」で判断する。
最後に:実務でも使える知識
この知識は、試験だけでなく実務でも役立つ。
- 税制の影響分析 - 新しい税金が導入されたとき、企業の供給行動がどう変わるか予測できる
- 補助金の効果検証 - 政府の補助金が市場にどう影響するか理解できる
- 環境政策の理解 - 炭素税や環境規制が産業に与える影響を分析できる
税金と供給曲線の関係を理解することで、経済ニュースの裏側が見えてくる。
中小企業診断士の勉強を通じて、経済の仕組みを深く理解していこう。