公共財とは何か

公共財(Public Goods)とは、非競合性と非排除性の性質を持つ財のことです。

公共財は、市場に任せると過少供給になる傾向があるため、政府が供給する必要があります。これが「市場の失敗」の一つです。

重要ポイント:公共財の定義は、「非競合性」と「非排除性」の2つの性質を持つことです。この2つをしっかり理解しましょう。

公共財の2つの性質

① 非競合性(Non-Rivalry)

定義:ある人の消費によって、別の人が消費できる量が減らないこと

具体例:

  • 国防:AさんがBさんが国防サービスを受けても、自分が受けられる国防サービスは減らない
  • 警察:Aさんが警察のパトロールで安全になっても、Bさんの安全は減らない
  • 灯台:A船が灯台の光を利用しても、B船が利用できる光は減らない

② 非排除性(Non-Excludability)

定義:対価を支払わない人が消費することを排除することができないこと

具体例:

  • 国防:税金を払っていない人でも、国防サービスから排除できない
  • 警察:お金を払わなくても、警察の治安維持サービスを受けられる
  • 灯台:お金を払わない船でも、灯台の光を利用できる

注意:「非排除性」とは、「お金を払わない人を排除できない」という意味です。これが、後述する「フリーライダー問題」につながります。

純粋公共財・準公共財・私的財の分類

財は、競合性排除性の有無によって、以下の4つに分類されます。

📊 財の分類表

排除性なし(非排除性) 排除性あり
競合性なし
(非競合性)
純粋公共財
(警察、国防)
準公共財
(クラブ財)
競合性あり 準公共財
(共有資源)
私的財
(電気製品、みかん)

① 純粋公共財(Pure Public Goods)

特徴:非競合性 + 非排除性

具体例:

  • 国防:誰かが利用しても減らない、お金を払わない人も守られる
  • 警察:治安維持サービスは全員に提供される
  • 消防:火災が起きたら、誰でも消防車が来る
  • 灯台:船がいくつ利用しても光は減らない、料金を取れない

② 準公共財(Quasi-Public Goods)

クラブ財(Club Goods):非競合性 + 排除性あり

  • 有料道路:料金を払わないと利用できないが、混雑しなければ競合しない
  • ケーブルテレビ:契約者だけ視聴できる、混雑しない
  • スポーツジム:会員だけ利用できる、混雑しなければ競合しない

共有資源(Common Resources):競合性あり + 非排除性

  • 海洋資源(魚):誰かが獲ると減る、排除できない
  • 公園:混雑すると使いにくくなる、誰でも入れる
  • 公共の牧草地:牛を放牧すると草が減る、誰でも使える

③ 私的財(Private Goods)

特徴:競合性あり + 排除性あり

具体例:

  • 電気製品:Aさんが買うとBさんは買えない、お金を払わないと買えない
  • みかん:食べると減る、お金を払わないと買えない
  • :着る人が増えると足りなくなる、購入しないと手に入らない

フリーライダー問題とは

フリーライダー問題(Free Rider Problem)とは、自らが得ている便益にかかる対価を公共財に対して支払おうとはせず、他人にただ乗りしようとすることを指します。

📌 フリーライダー問題の具体例

状況:ある地域に灯台を建設する場合

  • 灯台の費用:1000万円
  • 地域の船主:10人
  • 各船主の負担:100万円ずつ

問題点:

  • Aさん:「他の9人が払えば、私は払わなくても灯台を利用できる」と考える
  • Bさん:「他の9人が払えば、私は払わなくても灯台を利用できる」と考える
  • 全員が同じように考えると、誰もお金を払わない
  • 結果:灯台が建設されない

フリーライダー問題の結果:

公共財の供給を市場に任せていては、十分な量の公共財の供給が行われない。つまり、過少供給になってしまいます。

解決策:政府が税金で費用を集め、公共財を供給する。これにより、フリーライダー問題を回避できます。

試験問題を解いてみよう

実際の中小企業診断士試験の問題を見てみましょう。

📝 問題文

公共財に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

a:非競合性と非排除性の性質を持つ財を公共財という。その財の供給を市場に任せると過少になる傾向がある。

b:海洋資源などの共有資源は、排除性はないが、競合性がある。

c:公共財の供給を市場に任せるとフリーライダー問題が生じる可能性がある。

選択肢の検討

a:非競合性と非排除性の性質を持つ財を公共財という。その財の供給を市場に任せると過少になる傾向がある。

正しい。公共財の定義は「非競合性 + 非排除性」です。フリーライダー問題により、市場に任せると過少供給になります。

b:海洋資源などの共有資源は、排除性はないが、競合性がある。

正しい。海洋資源(魚など)は、誰でも獲れる(非排除性)が、獲ると減る(競合性)ため、共有資源に分類されます。

c:公共財の供給を市場に任せるとフリーライダー問題が生じる可能性がある。

正しい。非排除性があるため、お金を払わない人を排除できず、フリーライダー問題が発生します。

正解:ア(a:正 b:正 c:正)

すべて正しい記述です。

公共財の供給方法

公共財は、市場に任せると過少供給になるため、政府が供給する必要があります。

政府による供給方法

  • 税金による財源確保:国民から税金を集めて、公共財の費用を賄う
  • 直接供給:政府が直接、警察・消防・国防などのサービスを提供する
  • 補助金による支援:民間企業に補助金を出して、公共財を供給させる

準公共財の供給方法

  • クラブ財:民間企業が有料で供給(有料道路、ケーブルテレビなど)
  • 共有資源:政府が規制や管理を行う(漁業権、入場制限など)

試験対策のポイント

🎯 公共財の覚え方

  • 定義:非競合性 + 非排除性
  • 問題点:フリーライダー問題により過少供給
  • 解決策:政府が税金で供給

📌 財の分類を覚える

  • 純粋公共財:非競合性 + 非排除性(警察、国防)
  • クラブ財:非競合性 + 排除性(有料道路)
  • 共有資源:競合性 + 非排除性(海洋資源)
  • 私的財:競合性 + 排除性(電気製品、みかん)

⚠️ 頻出の誤答パターン

  • ❌ 「公共財は過大供給になる」→ 正しくは「過少供給」
  • ❌ 「共有資源は純粋公共財」→ 共有資源は競合性があるため準公共財
  • ❌ 「非排除性とは誰でも使える」→ 正しくは「お金を払わない人を排除できない」

まとめ

📚 公共財と純粋公共財

公共財の定義:非競合性 + 非排除性

純粋公共財の例:警察、国防、消防、灯台

フリーライダー問題:お金を払わない人を排除できないため、市場に任せると過少供給になる

解決策:政府が税金で供給する

公共財と純粋公共財は、中小企業診断士試験で頻出のテーマです。特に、「非競合性」「非排除性」の定義と、「フリーライダー問題」のメカニズムをしっかり理解しておきましょう。