需要の所得弾力性とは何か
中小企業診断士試験の経済学で頻出する「需要の所得弾力性」。教科書では数式が並び、正常財・劣等財・奢侈品・必需品といった用語が飛び交うが、本質を理解すれば簡単だ。
シンプルに言えば、「給料が上がったら、この商品をどれくらい多く買うか?」を数値化したものが需要の所得弾力性である。
需要の所得弾力性の定義と計算式
需要の所得弾力性とは、所得が1%変化したときに、需要量が何%変化するかを示す指標だ。
📐 需要の所得弾力性の公式
需要の所得弾力性(EY)= 需要量の変化率 ÷ 所得の変化率
EY = (ΔQ / Q) ÷ (ΔY / Y)
わかりやすく言い換えると
- 弾力性が大きい(EY > 1) → 所得が増えると需要が大きく増える(贅沢品)
- 弾力性が小さい(0 < EY < 1) → 所得が増えても需要はあまり増えない(必需品)
- 弾力性がマイナス(EY < 0) → 所得が増えると需要が減る(劣等財)
財の分類:正常財・劣等財・奢侈品・必需品
需要の所得弾力性の値によって、財は次のように分類される。
🔢 所得弾力性による財の分類
| 所得弾力性の値 | 財の分類 | 需要の変化 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| EY > 1 | 奢侈品(正常財) | 所得↑で需要が大きく↑ | 高級車、海外旅行、ブランド品 |
| 0 < EY < 1 | 必需品(正常財) | 所得↑で需要が少し↑ | 食料品、日用品、水道光熱費 |
| EY < 0 | 劣等財 | 所得↑で需要が↓ | インスタント麺、格安品、中古品 |
重要:奢侈品と必需品は、どちらも「正常財」に含まれる。正常財とは「所得が増えると需要が増える財」という定義なので、弾力性が1より大きいか小さいかは関係ない。
具体例で理解する:所得が増えたらどうなる?
所得が月10万円→12万円に増えたとき、それぞれの商品の需要がどう変化するか見てみよう。
① 高級レストラン(奢侈品)
需要:月1回 → 月3回(3倍に増加)
需要変化率 = (3 - 1) / 1 = 200%
所得変化率 = (12 - 10) / 10 = 20%
EY = 200% / 20% = 10
→ EY > 1 なので奢侈品(正常財)
② 食料品(必需品)
需要:月20回 → 月21回(わずかに増加)
需要変化率 = (21 - 20) / 20 = 5%
所得変化率 = 20%
EY = 5% / 20% = 0.25
→ 0 < EY < 1 なので必需品(正常財)
③ カップ麺(劣等財)
需要:月10個 → 月5個(減少)
需要変化率 = (5 - 10) / 10 = -50%
所得変化率 = 20%
EY = -50% / 20% = -2.5
→ EY < 0 なので劣等財
現実の消費行動と一致している:給料が上がると、高級品は買う頻度が大きく増え、食料品は少し増え、格安品は買わなくなる。まさにこの感覚が「需要の所得弾力性」だ。
グラフで見る:エンゲル曲線
エンゲル曲線は、横軸に需要量、縦軸に所得をとって、所得と需要の関係を示すグラフだ。
① 正常財のエンゲル曲線(右上がり)
- 所得が増えると需要も増える
- 奢侈品は傾きが急(所得が増えると需要が大きく増える)
- 必需品は傾きが緩やか(所得が増えても需要はあまり増えない)
② 劣等財のエンゲル曲線(右下がり)
- 所得が増えると需要が減る
- グラフは負の傾きになる
📊 試験ではグラフ問題も出る
「このエンゲル曲線は正常財か劣等財か?」という問題では、曲線の傾きを見る。
- 右上がり → 正常財
- 右下がり → 劣等財
試験でよく出る引っかけポイント
⚠️ 注意①:奢侈品も「正常財」に含まれる
試験では「奢侈品は正常財ではない」という誤った選択肢が出されることがある。
正常財 = 所得が増えると需要が増える財なので、奢侈品も必需品もどちらも正常財だ。
⚠️ 注意②:劣等財は「品質が悪い」という意味ではない
劣等財とは、所得が増えると需要が減る財という経済学上の定義であり、品質が低いという意味ではない。
例えば、カップ麺は品質が悪いわけではなく、給料が上がると外食に切り替えるため需要が減るのだ。
計算問題では符号に注目:所得弾力性がマイナスの場合、劣等財と即座に判断できる。試験では計算結果の符号を見れば、正常財か劣等財かすぐにわかる。
実務での応用例
企業の価格戦略に活用
- 景気が良いとき → 奢侈品(高級ブランド、高級レストラン)の販促を強化
- 景気が悪いとき → 必需品や劣等財(格安品、コスパ重視商品)の販促を強化
マーケティング戦略への応用
- 所得弾力性が高い商品 → ターゲットは高所得者層、富裕層向けの広告展開
- 所得弾力性が低い商品 → 景気に左右されにくいため、安定した需要が見込める
実例:コロナ禍での消費変化
コロナ禍で所得が減少した家庭では、外食(奢侈品)の需要が大きく減り、スーパーの食材(必需品)の需要が増えた。これは需要の所得弾力性が現実の消費行動に直結していることを示している。
まとめ
- 需要の所得弾力性 = 所得が1%変化したときの需要量の変化率
- 正常財 = 所得が増えると需要が増える財(EY > 0)
- 奢侈品:EY > 1(高級品、海外旅行など)
- 必需品:0 < EY < 1(食料品、日用品など)
- 劣等財 = 所得が増えると需要が減る財(EY < 0)(カップ麺、格安品など)
- 試験では符号と値の大小で分類を判断
- 実務では景気動向に応じた戦略立案に活用
🎯 試験対策の最重要ポイント
- 奢侈品も正常財に含まれる(EY > 1)
- 劣等財は所得弾力性がマイナス(EY < 0)
- エンゲル曲線の傾きで財の種類を判断(右上がり=正常財、右下がり=劣等財)
- 計算問題では符号に注意(マイナスなら劣等財)
需要の所得弾力性は、所得が変化したときの消費者行動を理論化したものだ。試験では頻出だが、一度理解すれば確実に得点できる分野なので、しっかり押さえておこう。
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