RENOSYのCMが素晴らしい:巧妙な順序のトリック
最近、年末に見たRENOSYのCMが印象的でした。「株?新NISA?」というフレーズから始まって、「次は不動産投資ですね」という流れで展開されるあのCMです。このCM、正直に言ってマーケティングとして本当によくできていると思います。
何が巧妙かというと、順序のトリックです。株式投資やNISAを「すでにやっている」ことを前提として、「次のステップ」として不動産投資を提示しています。この流れは非常によく考えられています。
今、20代後半から30代の若い世代の中には、そこそこの金融リテラシーを持ち始めている人が増えています。新NISAやiDeCoを始めた人も多いし、S&P500やオールカントリーといった言葉も普通に知っています。つまり、「投資の入門編」は一通りやってみたという層が増えているわけです。
RENOSYのCMは、まさにこの層を狙っています。「株はもうやってますね。NISAも満額積み立ててますね。じゃあ次は不動産投資ですね」という流れで、あたかも不動産投資が投資の「上級編」であるかのように見せているます。
でも、これは完全にミスリードです。株式投資よりも不動産投資の方が「進んだ」投資だというわけではありません。むしろ、コストが高くて、リスクも大きくて、期待値が低い投資だと僕は考えています。順序として正しいのは、「株式投資(インデックス)→ 個別株投資 → オルタナティブ投資(REITなど)」という流れであって、「株式投資 → 不動産投資」という順序じゃないはずです。
不動産投資には、トラップがたくさんあります。中間コストは証券投資の50-100倍もあるし、流動性リスクもあって、分散投資もなかなかできません。それを、あたかも「次のステップ」であるかのように提示しているわけです。このマーケティング戦略は、本当に巧妙だなと感心してしまいます。
僕が思うに、金融リテラシーが中途半端に高まった層こそ、不動産投資のターゲットになりやすいと考えています。「株はもう知ってる」「NISA枠も使い切った」という人は、「次」を探しています。そういう人に「不動産投資」という選択肢が提示されると、つい魅力的に見えてしまうんでしょう。でも、冷静に期待値を計算してみれば、不動産投資は避けるべき選択肢です。気をつけなければいけません。
RENOSYとは何か:GA technologiesの事業モデル
RENOSYというのは、GA technologiesが運営している不動産投資プラットフォームですが、2013年設立で2025年10月期の売上収益は2,489億円(前年比+31.1%)、営業利益71億円(前年比+92.1%)と、かなり急成長している企業です。入居率は99.7%と業界最高水準を誇っていて、AIによる物件選定やDXによるワンストップ管理をアピールしています。
RENOSYの強み(公式主張)
- AIによる物件選定:膨大なデータから収益性の高い物件を自動抽出
- DXによるワンストップ管理:アプリ「OWNR by RENOSY」で契約・管理・送金確認が完結
- 仕入・販売・管理の一気通貫:中間コストの透明化と迅速なトラブル対応
- 入居率99.7%:業界最高水準の入居率を維持
一見すると魅力的に見えますね。AIで物件を選んで、DXで管理を効率化して、高い入居率を維持している。でも、問題は「投資家にとって本当に有利なのか」という点です。
不動産投資の中間コスト:証券投資との決定的な違い
不動産投資と証券投資の最大の違いは、中間コストの多さです。証券投資(特にインデックス投資)は、コストが極めて低くて、例えばS&P500インデックスファンドの信託報酬なんて年0.1%程度です。一方で、不動産投資には以下のような多層的なコストが発生してきます。
不動産投資の主要コスト
- 販売手数料・プレミアム:物件価格に上乗せされた販売利益(5-15%程度)
- 管理委託手数料:家賃収入の5-10%を毎月徴収
- 修繕費:エアコン故障、水漏れ、内装修繕など予測不能なコスト
- 固定資産税・都市計画税:物件価格の1.4-1.7%程度を毎年支払い
- ローン金利:変動金利で年1-3%程度(金利上昇リスクあり)
- 空室リスク:入居率99.7%でも0.3%の空室期間は家賃収入ゼロ
- 売却時の仲介手数料:売却価格の3%+6万円+消費税
これらのコストを合計すると、年間で物件価格の5-10%程度が消えていく計算になるます。証券投資の年0.1%と比較すると、なんと50-100倍ものコスト差があります。これでは、不動産投資が証券投資に勝つのは極めて困難だと僕は考えています。
期待リターンの比較:証券投資 vs 不動産投資
期待リターンを比較してみましょう。S&P500の過去50年の平均リターンは年率約10%(配当込み)ですが、一方で不動産投資の表面利回りは4-6%程度と言われています。でも、前述の中間コストを差し引くと、実質利回りは1-3%程度になってしまうます。
30年後の投資シミュレーション
【証券投資】S&P500インデックス
- 初期投資:1,000万円
- 年率リターン:10%(歴史的平均)
- コスト:0.1%(信託報酬)
- 30年後の資産:約1億7,450万円
【不動産投資】RENOSYワンルームマンション
- 初期投資:1,000万円(頭金)+ ローン2,000万円
- 表面利回り:5%(家賃収入)
- 実質利回り:2%(コスト差引後)
- 30年後の資産:約1,500万円(ローン返済後、物件価値減少込み)
この試算はかなり楽観的な前提で計算しているます。不動産価格が下落しないし、空室も発生しないし、大規模修繕も不要という前提で計算しています。現実には、これらのリスクが顕在化する可能性が高くて、実質リターンはさらに低くなると僕は考えています。
僕が思うに、不動産投資で勝つためには、市場平均を大きく上回る「お宝物件」を見つける必要があるます。でも、それって証券投資で言えば「テンバガー(10倍株)」を探すのと同じことです。個別株投資で勝つのが難しいのと同じように、不動産投資で勝つのも難しいです。インデックス投資みたいに「市場平均を確実に取る」っていう戦略が、不動産投資には存在しないます。
不動産投資の隠れたリスク
不動産投資には、証券投資にはない独自のリスクがいくつかあるんだね。
流動性リスク:売りたい時に売れない
証券は市場が開いていれば数秒で売却できるね。でも、不動産は売却に数ヶ月から1年以上かかってしまう。急にお金が必要になっても、すぐには現金化できないんだ。売り急げば、買い叩かれるリスクもある。
分散投資の困難性:1物件に集中投資
証券投資では、1万円からでも世界中の数千銘柄に分散投資できます。でも、不動産投資は最低でも数百万円が必要で、1-2物件に集中投資せざるを得ません。リスク分散の観点から考えると、これは極めて不利です。
情報の非対称性:プロが圧倒的に有利
証券市場は情報開示が徹底されており、個人投資家とプロの情報格差は小さい。しかし、不動産市場は情報が不透明で、業者が圧倒的に有利だ。「AI選定」「スコアリング」と言っても、結局は業者が利益を取りやすい物件を勧めているに過ぎない。
法的リスク:規制変更の影響
GA technologiesのIR資料にも明記されているが、宅建業法等の法改正により事業環境が変化するリスクがある。投資家にとっても、税制改正や建築基準法改正により、想定外のコストが発生する可能性がある。
ミクロの成功とマクロの期待値
「でも、実際に不動産投資で成功している人もいる」という反論があるかもしれません。確かに、個別のケースでは成功する人もいます。しかし、それは証券投資でも同じです。
例えば、NVIDIAやTeslaを早期に買った人は大きく利益を得た。しかし、それは「結果論」であり、再現性はない。同様に、不動産投資で「たまたま良い物件を買えた」「たまたま地価が上昇した」というのは、再現性のない成功例だ。
重要なのは、全体の期待値だ。証券投資(特にインデックス投資)は、市場全体の成長を享受できる。米国株式市場は過去200年間、年率6-7%のリターンを続けてきた。一方、不動産投資は、中間コストの多さにより、期待値が大きく削られる。
僕の見解としては、投資判断は期待値で考えるべきです。宝くじは「当たった人」がいても、期待値はマイナスだから買いません。同様に、不動産投資は「成功した人」がいても、全体の期待値が低いから手を出しません。これが合理的な判断だと考えています。
マッチングアプリ勧誘の実態:新たな手口
友人から興味深い話を聞いた。不動産投資の勧誘が、マッチングアプリを通じて行われているという。これは僕も知らなかった手口で、勉強になった。
⚠️ マッチングアプリ勧誘の典型パターン
- ステップ1:マッチングアプリで出会い、数回デートする
- ステップ2:「資産運用に興味ある?」と軽く話題を振る
- ステップ3:「僕も不動産投資やってて、すごく良いよ」と体験談を語る
- ステップ4:「良い担当者がいるから紹介するよ」と営業に繋げる
- 報酬:紹介料として数十万円が支払われる仕組み
これは典型的な紹介報酬ビジネスだ。不動産投資会社は、顧客獲得コストとして紹介料を支払う。紹介者は数十万円の報酬を得られるため、マッチングアプリを通じて積極的に勧誘する。
問題は、紹介者が「投資の良し悪し」ではなく「紹介料」を目的としている点だ。本当に良い投資なら、自分だけで独占すればいい。わざわざ他人に勧める理由は、紹介料が目当てだからだ。
気をつけないといけません。マッチングアプリで出会った相手が、不自然に資産運用や投資の話を持ち出してきたら、警戒すべきだ。恋愛感情を利用した勧誘は、判断力を鈍らせる。冷静に考えれば、不動産投資のリスクとコストの高さは明らかだ。
GA technologies自身が抱えるリスク
RENOSYを運営するGA technologies自身も、多くのリスクを抱えているんだね。同社のIR資料には、以下のリスクが明記されている。
不動産市況変動リスク
地価とか金利が上昇すると、販売価格が上昇して購入需要が減退する可能性があるんだ。2024年以降、日銀の金融政策正常化によって金利が上昇している。これは不動産市場にとって逆風だ。
在庫リスク
仕入れた不動産が想定期間内に販売できなくて、保有コストが増加して、資金繰りに影響を与える可能性があるんだ。急成長企業にとって、在庫リスクは致命的だね。
法的規制リスク
宅建業法等の改正によって事業環境が変化するリスクがあるんだね。特に、不動産投資の勧誘方法に対する規制が強化される可能性もある。
僕が思うに、GA technologiesの急成長は、不動産バブルに支えられている面が大きいと考えています。金利上昇と不動産価格の調整が進めば、同社のビジネスモデルは大きな打撃を受ける可能性がある。投資家が損をするだけでなく、運営会社自体が破綻するリスクがあります。
まとめ:不動産投資をやらない理由
RENOSY不動産投資を徹底的に分析した結果、やはり証券投資と比較して構造的に不利だという結論に至った。理由を整理してみよう。
不動産投資をやらない5つの理由
- 中間コストが多すぎる:販売プレミアム、管理費、修繕費、税金、ローン金利など、証券投資の50-100倍のコスト
- 期待値が低い:S&P500の年10%に対し、不動産投資の実質利回りは年1-3%程度
- 流動性リスク:売りたい時にすぐ売れない、現金化に数ヶ月から1年以上
- 分散投資困難:1-2物件に集中投資せざるを得ず、リスクが高い
- 情報の非対称性:業者が圧倒的に有利で、個人投資家は不利
「でも、個別で成功している人もいるでしょう」という意見もあるね。確かに、ミクロでは成功するケースもある。でも、それって証券の個別株投資でも同じことだ。重要なのは、マクロの期待値であって、全体として不動産投資は不利だ。
僕は証券投資(特にS&P500インデックス)に集中する。理由は明確だ。コストが低くて、期待値が高くて、流動性があって、分散投資が容易で、情報開示が透明だからだ。不動産投資は、これらの点で証券投資に劣るんだね。
マッチングアプリ勧誘の実態も明らかになった。恋愛感情を利用した紹介報酬ビジネスは、特に悪質だ。気をつけないといけない。投資判断は、感情でなく、期待値で行うべきだ。