はじめに:不動産投資の誘惑と現実
友人から不動産投資の話を聞くことがある。RENOSYという不動産投資サービスで、ワンルームマンションに投資しているという。話は面白おかしく聞いているが、正直なところ、私は不動産投資には手を出さない。理由は明確だ。証券投資と比較して、中間コストが多すぎて期待値が不利だからだ。
今回、GA technologies(東証グロース上場、証券コード3491)が運営するRENOSY不動産投資について徹底的に分析した。結論から言えば、やはり不動産投資は証券投資と比べて構造的に不利だ。個別のケースでは利益が出ることもあるが、それは証券の個別株投資でも同じこと。全体の期待値として、不動産投資は避けるべきだと考えている。
RENOSYのCMが素晴らしい:巧妙な順序のトリック
RENOSYのCMを見たことがあるだろうか。「株?新NISA?」というフレーズで始まり、「次は不動産投資」という流れで展開される。このCM、正直言って素晴らしい。マーケティングとして完璧だ。
何が素晴らしいかと言うと、順序のトリックだ。株式投資やNISAを「すでにやっている」ことを前提にして、「次のステップ」として不動産投資を提示している。これは非常に巧妙だ。
今、20代後半から30代の若い世代は、そこそこの金融リテラシーを持ち始めている。新NISAやiDeCoを始めた人も多い。S&P500やオールカントリーといった言葉も知っている。つまり、「投資の入門編」は卒業した層が増えている。
RENOSYのCMは、まさにこの層をターゲットにしている。「株はもうやってるよね。NISAも満額積み立ててるよね。じゃあ次は不動産投資だよね」という流れで、あたかも不動産投資が投資の「上級編」であるかのように見せている。
しかし、これは完全にミスリードだ。株式投資よりも不動産投資の方が「進んだ」投資ではない。むしろ、コストが高く、リスクが大きく、期待値が低い投資だ。順序として正しいのは、「株式投資(インデックス)→ 個別株投資 → オルタナティブ投資(REITなど)」であって、「株式投資 → 不動産投資」ではない。
不動産投資は、トラップが多くて危険な投資だ。中間コストは証券投資の50-100倍、流動性リスクがあり、分散投資もできない。それを、あたかも「次のステップ」であるかのように提示する。このマーケティング戦略は、本当に巧妙だと感心する。
私見として、金融リテラシーが中途半端に高まった層こそ、不動産投資のターゲットになりやすい。「株はもう知ってる」「NISA枠も使い切った」という人は、「次」を求めている。そこに「不動産投資」という選択肢が提示されると、つい魅力的に見えてしまう。しかし、冷静に期待値を計算すれば、不動産投資は避けるべき選択肢だ。気をつけなければならない。
RENOSYとは何か:GA technologiesの事業モデル
RENOSYは、GA technologiesが運営する不動産投資プラットフォームだ。2013年設立、2025年10月期の売上収益は2,489億円(前年比+31.1%)、営業利益71億円(前年比+92.1%)と、急成長している企業だ。入居率は99.7%と業界最高水準を誇り、AIによる物件選定やDXによるワンストップ管理をアピールしている。
RENOSYの強み(公式主張)
- AIによる物件選定:膨大なデータから収益性の高い物件を自動抽出
- DXによるワンストップ管理:アプリ「OWNR by RENOSY」で契約・管理・送金確認が完結
- 仕入・販売・管理の一気通貫:中間コストの透明化と迅速なトラブル対応
- 入居率99.7%:業界最高水準の入居率を維持
一見すると魅力的に見える。AIで物件を選び、DXで管理を効率化し、高い入居率を維持している。しかし、問題は「投資家にとって本当に有利なのか」という点だ。
不動産投資の中間コスト:証券投資との決定的な違い
不動産投資と証券投資の最大の違いは、中間コストの多さだ。証券投資(特にインデックス投資)は、コストが極めて低い。例えば、S&P500インデックスファンドの信託報酬は年0.1%程度だ。一方、不動産投資には以下のような多層的なコストが発生する。
不動産投資の主要コスト
- 販売手数料・プレミアム:物件価格に上乗せされた販売利益(5-15%程度)
- 管理委託手数料:家賃収入の5-10%を毎月徴収
- 修繕費:エアコン故障、水漏れ、内装修繕など予測不能なコスト
- 固定資産税・都市計画税:物件価格の1.4-1.7%程度を毎年支払い
- ローン金利:変動金利で年1-3%程度(金利上昇リスクあり)
- 空室リスク:入居率99.7%でも0.3%の空室期間は家賃収入ゼロ
- 売却時の仲介手数料:売却価格の3%+6万円+消費税
これらのコストを合計すると、年間で物件価格の5-10%程度が消えていく計算になる。証券投資の年0.1%と比較すると、50-100倍のコスト差だ。これでは、不動産投資が証券投資に勝つのは極めて困難だ。
期待リターンの比較:証券投資 vs 不動産投資
期待リターンを比較してみよう。S&P500の過去50年の平均リターンは年率約10%(配当込み)だ。一方、不動産投資の表面利回りは4-6%程度と言われているが、前述の中間コストを差し引くと、実質利回りは1-3%程度になる。
30年後の投資シミュレーション
【証券投資】S&P500インデックス
- 初期投資:1,000万円
- 年率リターン:10%(歴史的平均)
- コスト:0.1%(信託報酬)
- 30年後の資産:約1億7,450万円
【不動産投資】RENOSYワンルームマンション
- 初期投資:1,000万円(頭金)+ ローン2,000万円
- 表面利回り:5%(家賃収入)
- 実質利回り:2%(コスト差引後)
- 30年後の資産:約1,500万円(ローン返済後、物件価値減少込み)
この試算はかなり楽観的な前提で計算している。不動産価格が下落せず、空室も発生せず、大規模修繕も不要という前提だ。現実には、これらのリスクが顕在化する可能性が高く、実質リターンはさらに低くなる。
私見だが、不動産投資で勝つためには、市場平均を大きく上回る「お宝物件」を見つける必要がある。しかし、それは証券投資で言えば「テンバガー(10倍株)」を探すのと同じことだ。個別株投資で勝つのが難しいのと同様に、不動産投資で勝つのも難しい。インデックス投資のような「市場平均を確実に取る」戦略が、不動産投資には存在しない。
不動産投資の隠れたリスク
不動産投資には、証券投資にはない独自のリスクが存在する。
流動性リスク:売りたい時に売れない
証券は市場が開いていれば数秒で売却できる。しかし、不動産は売却に数ヶ月から1年以上かかる。急にお金が必要になっても、すぐには現金化できない。売り急げば、買い叩かれるリスクもある。
分散投資の困難性:1物件に集中投資
証券投資では、1万円からでも世界中の数千銘柄に分散投資できる。しかし、不動産投資は最低でも数百万円が必要で、1-2物件に集中投資せざるを得ない。リスク分散の観点から、これは極めて不利だ。
情報の非対称性:プロが圧倒的に有利
証券市場は情報開示が徹底されており、個人投資家とプロの情報格差は小さい。しかし、不動産市場は情報が不透明で、業者が圧倒的に有利だ。「AI選定」「スコアリング」と言っても、結局は業者が利益を取りやすい物件を勧めているに過ぎない。
法的リスク:規制変更の影響
GA technologiesのIR資料にも明記されているが、宅建業法等の法改正により事業環境が変化するリスクがある。投資家にとっても、税制改正や建築基準法改正により、想定外のコストが発生する可能性がある。
ミクロの成功とマクロの期待値
「でも、実際に不動産投資で成功している人もいるじゃないか」という反論があるかもしれない。確かに、個別のケースでは成功する人もいる。しかし、それは証券投資でも同じだ。
例えば、NVIDIAやTeslaを早期に買った人は大きく利益を得た。しかし、それは「結果論」であり、再現性はない。同様に、不動産投資で「たまたま良い物件を買えた」「たまたま地価が上昇した」というのは、再現性のない成功例だ。
重要なのは、全体の期待値だ。証券投資(特にインデックス投資)は、市場全体の成長を享受できる。米国株式市場は過去200年間、年率6-7%のリターンを続けてきた。一方、不動産投資は、中間コストの多さにより、期待値が大きく削られる。
私見として、投資判断は期待値で考えるべきだ。宝くじは「当たった人」がいても、期待値はマイナスだから買わない。同様に、不動産投資は「成功した人」がいても、全体の期待値が低いから手を出さない。これが合理的な判断だと考えている。
マッチングアプリ勧誘の実態:新たな手口
友人から興味深い話を聞いた。不動産投資の勧誘が、マッチングアプリを通じて行われているという。これは私も知らなかった手口で、勉強になった。
⚠️ マッチングアプリ勧誘の典型パターン
- ステップ1:マッチングアプリで出会い、数回デートする
- ステップ2:「資産運用に興味ある?」と軽く話題を振る
- ステップ3:「私も不動産投資やってて、すごく良いよ」と体験談を語る
- ステップ4:「良い担当者がいるから紹介するよ」と営業に繋げる
- 報酬:紹介料として数十万円が支払われる仕組み
これは典型的な紹介報酬ビジネスだ。不動産投資会社は、顧客獲得コストとして紹介料を支払う。紹介者は数十万円の報酬を得られるため、マッチングアプリを通じて積極的に勧誘する。
問題は、紹介者が「投資の良し悪し」ではなく「紹介料」を目的としている点だ。本当に良い投資なら、自分だけで独占すればいい。わざわざ他人に勧める理由は、紹介料が目当てだからだ。
気をつけましょう。マッチングアプリで出会った相手が、不自然に資産運用や投資の話を持ち出してきたら、警戒すべきだ。恋愛感情を利用した勧誘は、判断力を鈍らせる。冷静に考えれば、不動産投資のリスクとコストの高さは明らかだ。
GA technologies自身が抱えるリスク
RENOSYを運営するGA technologies自身も、多くのリスクを抱えている。同社のIR資料には、以下のリスクが明記されている。
不動産市況変動リスク
地価や金利の上昇により、販売価格が上昇し、購入需要が減退する可能性がある。2024年以降、日銀の金融政策正常化により、金利が上昇している。これは不動産市場にとって逆風だ。
在庫リスク
仕入れた不動産が想定期間内に販売できず、保有コストが増加し、資金繰りに影響を与える可能性がある。急成長企業にとって、在庫リスクは致命的だ。
法的規制リスク
宅建業法等の改正による事業環境の変化。特に、不動産投資の勧誘方法に対する規制が強化される可能性がある。
私見だが、GA technologiesの急成長は、不動産バブルに支えられている面が大きい。金利上昇と不動産価格の調整が進めば、同社のビジネスモデルは大きな打撃を受ける可能性がある。投資家が損をするだけでなく、運営会社自体が破綻するリスクもゼロではない。
まとめ:不動産投資をやらない理由
RENOSY不動産投資を徹底的に分析した結果、やはり証券投資と比較して構造的に不利だという結論に至った。理由を整理しよう。
不動産投資をやらない5つの理由
- 中間コストが多すぎる:販売プレミアム、管理費、修繕費、税金、ローン金利など、証券投資の50-100倍のコスト
- 期待値が低い:S&P500の年10%に対し、不動産投資の実質利回りは年1-3%程度
- 流動性リスク:売りたい時にすぐ売れない、現金化に数ヶ月から1年以上
- 分散投資困難:1-2物件に集中投資せざるを得ず、リスクが高い
- 情報の非対称性:業者が圧倒的に有利で、個人投資家は不利
「でも、個別で成功している人もいるじゃないか」という意見はある。確かに、ミクロでは成功するケースもある。しかし、それは証券の個別株投資でも同じことだ。重要なのは、マクロの期待値であり、全体として不動産投資は不利だ。
私は証券投資(特にS&P500インデックス)に集中する。理由は明確だ。コストが低く、期待値が高く、流動性があり、分散投資が容易で、情報開示が透明だからだ。不動産投資は、これらの点で証券投資に劣る。
マッチングアプリ勧誘の実態も明らかになった。恋愛感情を利用した紹介報酬ビジネスは、特に悪質だ。気をつけましょう。投資判断は、感情ではなく、期待値で行うべきだ。