市場概況:トランプ関税判決見送りで株高

2026年1月9日の米国市場は、トランプ関税判決の見送りという「肩透かし」を好感して上昇した。市場は最悪の判決を警戒していたため、何も起きなかったことが安堵材料となった。S&P500は最高値を更新し、10/11セクターが上昇。公益セクターと素材セクター・工業セクターがテック株を抑えてトップパフォーマンスを記録した。

一方で、ヘルスケアセクターは弱含み。10年債利回りは4.18%(変わらず)、2年債は3.54%(+0.04)とやや上昇した。雇用統計は労働市場減速を鮮明に示したが、最終的な判決は数週間後か。原子炉銘柄が高騰し、アパレルは大幅下落という、はっきりとした明暗が分かれた市場だった。

トランプ関税判決見送り:なぜ市場は安堵したのか

1月9日、市場が注目していたトランプ政権の関税判決が見送られた。これは事実上「何も起きなかった」ということだが、市場にとっては最高のニュースだった。なぜか。

トランプ関税とは何だったのか

トランプ政権は、中国やメキシコなどからの輸入品に対して高い関税を課す政策を推進している。これにより米国企業のコストが上昇し、インフレが再燃する可能性が懸念されていた。特に製造業や小売業にとっては大きな打撃となる可能性があった。

市場は「最悪の判決」を警戒していた。もし大規模な関税が即座に発動されれば、企業の利益が圧迫され、株価が急落する可能性があった。しかし、1月9日の時点で何も発表されなかった。つまり、少なくとも当面の間は現状維持ということだ。

これが「肩透かし」と呼ばれる理由だ。市場は悪いニュースを織り込んでいたため、何も起きないことが好材料となった。実際、判決が見送られたことで、投資家は安堵し、株を買い戻した。結果として市場は上昇した。

私見だが、この「見送り」は一時的なものに過ぎない可能性がある。トランプ政権が関税政策を放棄したわけではなく、単に発表を先延ばししただけだ。数週間後には正式な判決が下される可能性が高い。その時、市場がどう反応するかはわからない。今回の上昇は、いわば「ひとまず安心」という一時的な買いだと考えるべきだろう。

経済指標:消費者心理改善と雇用統計の明暗

1月ミシガン大学消費者心理:予想を上回る改善

1月のミシガン大学消費者心理指数は54.0となり、予想の53.5(前回52.9)を上回った。これは消費者心理が予想以上に改善していることを示している。消費者が将来の経済に対して楽観的になっているということだ。

消費者心理の改善は、個人消費の増加につながる可能性がある。米国経済の約70%は個人消費で成り立っているため、この指標の改善は経済全体にとってポジティブだ。ただし、まだ50台前半という低い水準であり、本格的な回復とまでは言えない。

12月雇用者数:+5万人とほぼ横ばい

12月の非農業部門雇用者数は+5万人となり、予想の+5.5万人(前回+5.6万人)とほぼ一致した。失業率は4.4%に低下し、労働市場は安定している。

しかし、雇用統計の内容を詳しく見ると、労働市場減速が鮮明になっている。雇用の伸びは鈍化しており、企業は新規採用を控えている可能性がある。これは経済減速の兆候とも取れるが、一方で労働市場が過熱していないことはインフレ抑制にはプラスだ。

トランプ:金利対策で2000億ドルの住宅ローン債権購入を指示

トランプ政権は、金利対策として2000億ドルの住宅ローン債権(モーゲージボンド)購入を指示した。これは住宅ローン金利を引き下げるための政策だ。

米国では住宅ローン金利が上昇しており、住宅市場が冷え込んでいる。金利が高いと、住宅を購入する人が減り、不動産市場が停滞する。トランプ政権は、政府がモーゲージボンドを大量に購入することで、住宅ローン金利を引き下げようとしている。

私見だが、この政策は短期的には住宅市場にプラスだが、長期的にはインフレを再燃させるリスクがある。政府が大量の債券を購入すれば、市場に資金が流入し、インフレ圧力が高まる可能性がある。FRBが利下げを検討している中で、政府がこうした刺激策を打つのは、政策の整合性に疑問が残る。

Oracle 4%超上昇:クラウド需要の恩恵

Oracle(ORCL)が4%以上上昇し、ソフトウェア・インフラセクターで目立った動きを見せた。Oracleはデータベースソフトウェアの老舗企業だが、近年はクラウドビジネスに注力している。

Oracleの上昇は、クラウド需要の強さを反映している。企業はオンプレミス(自社でサーバーを持つ)からクラウドへの移行を進めており、OracleのクラウドインフラサービスがAI時代において強力な選択肢となっている。特にNVIDIAのGPUをベースとしたクラウドサービスを提供しており、AI学習やデータ分析の需要を取り込んでいる。

私見だが、Oracleは地味な存在だが、確実に成長している。MicrosoftのAzureやAmazonのAWSに比べると規模は小さいが、企業向けデータベースでは圧倒的なシェアを持っている。既存顧客をクラウドに移行させるビジネスモデルは堅実で、長期投資には向いている銘柄だと感じる。ただし、株価が割高になっていないか注視する必要がある。

半導体製造装置メーカーの躍進

1月9日の市場で注目すべきは、半導体製造装置メーカーの躍進だ。これらの企業は半導体チップを製造するための装置を作っており、AI需要の拡大とともに注目を集めている。

主要な半導体製造装置メーカー

  • ASML(オランダ):EUV露光装置の独占企業
  • Applied Materials(米国):エッチング・成膜装置のリーダー
  • Lam Research(米国):エッチング装置で高いシェア
  • Tokyo Electron(日本):成膜・洗浄装置で世界トップクラス
  • KLA Corporation(米国):検査装置のトップ企業

半導体製造装置は、半導体チップを作るために欠かせない存在だ。NVIDIAやAMDがAI向けGPUを作るためには、TSMCやSamsungといったファウンドリ(半導体製造受託企業)が必要で、そのファウンドリが使う装置を作っているのが、これらの企業だ。

特にASMLは、EUV(極端紫外線)露光装置という超高性能な装置を独占的に提供している。この装置がなければ、最先端の半導体チップは作れない。つまり、ASMLは半導体産業の「ボトルネック」を握っている企業と言える。

Applied MaterialsやLam Researchは、エッチング(回路を削る工程)や成膜(薄い膜を形成する工程)の装置で高いシェアを持つ。Tokyo Electronは日本企業だが、世界市場でトップクラスの競争力を持っている。

私見だが、半導体製造装置メーカーは、半導体チップメーカーよりも安定している。NVIDIAやAMDは競争が激しく、技術トレンドの変化でシェアが変動するリスクがある。しかし、製造装置メーカーは、どのチップメーカーが勝っても装置は必要なため、リスクが分散されている。長期投資を考えるなら、製造装置メーカーも選択肢に入れるべきだと思う。

ただし、これらの企業は景気敏感株でもある。半導体需要が減速すれば、装置への投資も減る。今はAI需要で盛り上がっているが、いつまで続くかは不透明だ。慎重に見極める必要がある。

その他の注目セクター

原子炉銘柄が高騰

原子炉関連銘柄が高騰した。これはAIデータセンターの電力需要増加が背景にある。AI学習には膨大な電力が必要で、既存の電力網では供給が追いつかない可能性がある。そのため、原子力発電が見直されている。

特にSMR(Small Modular Reactor:小型モジュール炉)と呼ばれる新型原子炉が注目されている。従来の大型原子炉に比べて、建設期間が短く、コストも低い。データセンター専用の電源として導入される可能性がある。

アパレル大幅下落

アパレルセクターは大幅下落した。消費者心理は改善しているものの、可処分所得が減少しており、衣料品への支出は抑制されている。また、オンライン販売の競争激化により、実店舗を持つアパレル企業の収益が圧迫されている。

まとめ:安堵相場は続くのか

2026年1月9日の市場は、トランプ関税判決が見送られたことで「安堵買い」が入った。Oracle急騰、半導体製造装置メーカーの躍進、原子炉銘柄の高騰など、個別のストーリーも盛りだくさんだった。

しかし、今回の上昇は一時的なものに過ぎない可能性がある。トランプ関税は先延ばしされただけで、数週間後には判決が下される。その時、市場がどう反応するかはわからない。雇用統計も労働市場減速を示しており、経済の先行きには不透明感が残る。

一方で、AI需要は依然として強く、半導体製造装置メーカーやクラウド企業は堅調だ。長期投資を考えるなら、こうした成長分野に注目するのは合理的だと思う。ただし、バリュエーションには注意が必要だ。既に株価が高い銘柄に追加投資するのは勇気がいる。

私見だが、今は様子見が賢明だと感じる。トランプ関税の正式判決、FRBの金融政策の方向性、そしてAI需要の持続性。これらが見えてくるまで、大きなポジションを取るのはリスクが高い。短期的な上昇に飛びつくよりも、長期的な視点で投資機会を待ちたい。